翻訳文学、ノンフィクション、ミステリ、ノワールを中心に絵本や辞書まで。偏愛と矛盾と愉悦に満ちた、さすらい読書備忘録。


by bookgipsy42
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この1年で読んだノンフィクションはわずか23冊と少ないので、ランキングは7位まで。
とはいえ、フィクションと比べると、「当たり」の的中率が高く、
ベスト7を絞るのが難しかったので、なるべく「How to 本」は外すことにした。

①『聖の青春』(大崎善生)
②『ヴェネツィアの宿』(須賀敦子)
③『終わらぬ民族浄化 セルビア・モンテネグロ』(木村元彦)
④『将棋の子』(大崎善生)
⑤『オリンピア―――ナチスの森で』(沢木耕太郎)
⑥『ファイアハウス』(デイヴィッド・ハルバースタム)
⑦『もの食う人々』(辺見庸)


①と④は大崎善生の将棋ものノンフィクション。
特に①は近年のノンフィクション読み物でも傑出した作品。
元将棋雑誌の編集者らしく、将棋への愛情は深く、棋士を見守る目が優しく温かい。

②は一昨日発売の季刊誌「考える人」でも特集されている、
没後20年の稀代のエッセイスト(作家兼翻訳家でもある)。
この人の著作はこの1冊しか読んでいないのだが、
全集を買おうかなと思わせるほど、じんわりじんわりと心に響く。

③は旧ユーゴスラビアにおける民族浄化の実態を丹念に取材した1冊。
NATO空爆前後のコソボ紛争の凄惨な現実から目を背けることなく、
何度も現地に足を運び事実を追った、ジャーナリストとしての矜持に満ち溢れている。

⑤1936年のヒットラー政権下で開催されたベルリン五輪の実態と
五輪に参加した日本人選手たちの軌跡に、膨大な記録とインタビューから迫った一冊。
五輪のプレッシャーに負けて成績を残せなかった選手たちが
次大会での再挑戦を誓いながら直後に戦争に召集され、
そして、あっけなく散っていく様はとてつもなく悲しい。

⑥は9.11のアメリカ自爆テロの際に怪我人の救助に駆けつけた現場で
ワールドトレードセンターの倒壊に巻き込まれて死亡した消防士達に焦点を当てた一冊。
消防士特有の仲間との絆の強さ、家族との愛情の深さもさることながら、
やはり、彼らの「市民救助」に対する高い意識には胸を打たれる。
その高い救助意識ゆえに命を失ってしまったという紛れもない事実には言葉を失う。

⑦は辺見庸代表作の問題を抱えた世界各国の食生活ルポルタージュ。
食べるという人間にとって普遍的かつ本能的なはずの行為に、
国々によってどれほどの価値の差が生じているのかがよく分かる。

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# by bookgipsy42 | 2008-12-31 18:13 | その他
①『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス)
②『深海のYrr(上・中・下)』(フランク・シェッツィング)
③『チャイルド44(上・下)』(トム・ロブ=スミス)
④『荒ぶる血』(ジェイムズ・カルロス=ブレイク)
⑤『黄色い雨』(フリオ・リャマサーレス)
⑥『20世紀の幽霊たち』(ジョー・ヒル)
⑦『ラジオ・キラー』(セバスチャン・フィツェック)
⑧『千年の祈り』(イーユン・リー)
⑨『北東の大地 逃亡の西』(スコット・ウォルヴン)
⑩『私を離さないで』(カズオ・イシグロ)


1~3位の作品は今年読んだ80冊の中でも間違いなくベスト5に入れたくなる傑作で、
①は生涯でもベスト3に入る、今さら説明不要の大作で今年のNo.1。

③は「このミス2008」では海外部門1位だったが、
地球規模の壮大なスケールに度肝を抜かれたSF大作の②を優先した。
いずれにせよ、両作品とも傑作であることには違いない。

5位までは悩むことなく決めることができたが、6位以降は悩んだ。
帯の惹句で衝動買いをした作品はどうしても過大な期待を寄せがちで、
その期待値を超えないと良作であっても多少の不満を抱いてしまう。
ちなみに9位は今年最初の一冊。我ながらよほど印象深かったと見える。


①はあらすじ紹介者泣かせの込み入った芳醇なストーリーが特色の至高の一冊。
端的にいえば、架空の村コマンドを開拓したブエンディア一族の創世から衰退までを
独特の文体で訥々と書き連ねた壮大な年代記という趣。
個人的には、作者のガルシア=マルケスが元ジャーナリストだというのが信じられない。
徹底的に事実と照合して記事を書き上げるという仕事に従事していた人間が、
いったいぜんたい、どうしてこんな奇想天外かつ幻想的なストーリーを紡げるのだろう。

②はドイツ発の海洋SFミステリ。専門的かつ説明的な生物学的な話がありつつも、
夢中になって上中下巻をあっという間に読み終えた。
地球にとって人間とはどれほど卑劣で矮小な存在であるのかを考えさせられるとともに、
逆説的に、日々の生活をもっと実りのある大切なものにしようと思い至った。

③は旧ソ連、スターリン政権下に暗躍した児童連続殺人鬼を追う
元エリート捜査官の活躍を描いたものだが、何より圧倒的な迫力を醸し出すのは、
独裁恐怖政治のもたらす不条理かつ残忍な社会システムの冷酷さ。
ナチスがユダヤ人を虐殺したのとは違い、同胞が同胞をちょっとした出来事で処刑する。
巨大な恐怖(権力)の前には殺人者の恐怖など二の次、そんな時代背景が恐ろしい。

④はメキシコ革命時代の冷酷な闘士の血を受け継ぐ殺し屋が主役の冒険活劇。
暗黒街に生きる男たちの過酷ながら快活とした生き様が生き生きと描かれていて
タイトルどおり、読者の血も荒ぶり、滾らせてくれること請け合いの一冊。

かなり前に読んだ⑤の余韻がいまだ冷めず5位にランクイン。
しとしとと静謐に紡がれたストーリーを浴槽の中でキャンドルを灯しながら読んだせいか、
今でも描かれた情景が皮膚を通って心にじっとりと染み入るかのように感じる。

期待の大きかった⑥はこの順位。期待値が大きくてハードルが高すぎた。
決して評価が低いわけではないが、短編集だけに私には合わない作品が幾つかあった。
もちろん、良作やギョッと思わせる快作もあり、形容しがたい異様な思いに囚われた。

⑦は初めて読んだドイツ人作家の作品。
怒涛のように目まぐるしく変化する展開はエンタメとしては十分に面白い。
どんでん返しもあって、練りに練られたストーリーには食傷気味も感心した。

⑧は初めて読んだ中国人作家の作品。
中国社会に土着した作品で、朴訥とした淡い描写がとても印象的。
こういう話が生まれる中国の土壌に、やはり近くて遠い国だなという思いを一層強くした。

⑨は1年ほど前に読んだ、広大なアメリカの片隅で負け犬然として暮らす男たちの話。
不快というか、哀れというか、悲惨なというか、共感できる要素はひとつもないのに、
なぜか燻ぶり続ける熾火のように心の隅のほうに残っている。

⑩は去年(だっけ?)、流行作家の仲間入りを果たした日系人作家の出世作。
途中からある程度のあらすじが読めるため、こんな未来にだけはなってほしくはない、
そんなことをずっと願いながら読み進めたことを覚えている。
人間はなんと残酷なことを思いつくのだろう、とも。

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# by bookgipsy42 | 2008-12-31 01:29 | その他
『北東の大地 逃亡の西』でスタートしてから(正確には大晦日に読了だが)
2008年に読み終えた本は80冊(雑誌を除く)。

「今年こそは年間100冊」を目標にしてきたので、
20冊も少ないのは正直、忸怩たるものもないではないが、
今年もいい本に出合えたことには素直に感謝したいというか、幸せだった。

読書用の手帳を改めて見てみると、この一年間にいろんな本を読んできたなあと思う。
1週間に何冊も読了した週もあれば、一月に1冊しか読み終えなかった月もある。

今年の1月に読んだ本の内容や情景がまだ心に浮かんでくる本もあれば、
今月読了したばかりなのにほとんどあらすじを忘れた本もある。
就寝前に読んだ本もあれば、風呂の中でキャンドルを灯して熱中した本もある。
「読み方」も本の印象を左右するんだなと改めて気づかされた年でもある。

そんな80冊を国内&海外フィクション、及びノンフィクションに分けて私的にランキング。
(内訳は国内50冊/海外(翻訳モノ)30冊、フィクション57冊/ノンフィクション23冊)
ちなみに新刊はあまり買わないほうなので今年発刊分は少なく、
加えて、「私的」なので、私の好みがもちろん優先されています。あしからず。

まずは国内フィクションから。

①『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎)
②佐藤亜紀 『バルタザールの遍歴』『天使』『雲雀』ほか
③『弥勒世(上・下)』(馳星周)
④森博嗣 『四季(秋)』ほか
⑤和田 竜 『忍びの国』『のぼうの城』
⑥『ジョーカー・ゲーム』(柳広司)
⑦『太平洋の薔薇』(笹本稜平)
⑧『TENGU』(柴田哲孝)
⑨『背の目』(道尾秀介)
⑩『新釈 走れメロス』(森見登美彦)


「のめる込ませる興奮度」+「心に染み入る深度」+「考えさせられる思索度」をもとに、
7位まではすんなり決まった。8位から10位は、直感的に。

①は「このミス2008」第一位、「本屋大賞」を含む、4冠に輝いた500ページもの大作。
過剰な期待をしないで読み進めたのだが、噂に違わぬ見事な作品。
やや冗長すぎるきらいもあるが、一気にのめりこんで読んだ。特に思索度は満点だった。

②の佐藤亜紀は今年の大収穫の一人。
こんな書き手が日本人にいるのか、と驚愕するとともに興奮した。
挙げた3作品すべてが素晴らしいので作者名で。

ノワールの旗手、馳星周が日本返還前夜の沖縄の史実に基づいて
書き上げた暗黒小説。上下巻で1200ページに上る超大作で
行間から迸る負に満ちたエネルギーが圧巻の一言に尽きる。

学生時代以来、久々に読み進めた森博嗣の一連のシリーズは、
特に『四季 秋』で明らかにされた2つのシリーズの繋がりに唸らされると同時に、
森の壮大な世界観にまさに、「天才だ・・・」と震えずにはいられなかった。

⑤の和田竜も今年の発見の一人。毛嫌いしていた時代小説に開眼させるほどの
抜群の面白さで、とりわけ、『忍びの国』は超ド級の迫力。
時代小説にもっと挑戦してみようと思わせてくれた。

⑥は新感覚のスタイリッシュで型破りな短編スパイ小説。
ある章では主人公のスパイはわずかに姿を見せるだけでセリフも何もない。
ただ、この小説を白眉なものにしているのはロマン溢れる最後の章だと私的には思う。

⑦は男気に満ちた海洋ロマン冒険小説。
海の男の矜持とはなんぞや、ってなことを言動で示す主人公の姿は
男として尊守すべき大事なことを教えてくれるようで、胸が熱くなった。

⑧は20数年前に群馬の寒村で起こった殺人事件を在日米軍と政治的に関連させ、
壮大で奇想天外な結末に落とし込んだ手腕に感心した。
ねっとりと肌に絡まってくるような不快な恐怖感が秀逸。

⑨はおどろおどろしさ満開のホラー小説。
天狗伝説と絡めた身の毛のよだつ不気味さが癖になりそう。
少なくとも私なら冒頭の経験だけでこの地には二度と足を踏み入れないぞと固く誓う。

⑩は古典の文字通り、現代的な新釈版で、乾いた笑いを提供してくれる。
この青春小説を読んで森見登美彦のファンになったのだが、
それ以上に、学生時代に戻りたくて戻りたくてウズウズしてしまった。

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# by bookgipsy42 | 2008-12-28 15:00 | その他

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)

本谷 有希子 / 講談社

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ぶっ飛んでるという噂はちらほら聞いていたが、これほどまでとは予想だにしていなかった。

何よりも、「偏見」を完全に覆してくれる独(毒)創的なキャストが素晴らしい。
自らを女優になるに相応しい特別な存在と信じて妹・清深を拷問のように虐げる姉・澄伽、
姉の生活を嘗め回すかのように観察する清深、妻・待子への暴力を憚らない兄の宍道・・・
とまあ、まるでノワール小説のような陰惨な趣。

さらに澄伽の清深への殺意に満ちた惨たらしい虐待シーン(熱湯を直接飲ませるなど)や、
両親の凄惨な交通事故を目撃した清深の回想シーンのエグイ描写(脳漿が飛び散ったり、
臓器が搾り出されたりなど)を読むにつけ、
著者が女性だということがにわかには信じられなくなってくる。

もっともセックスの描写だけは肝心の場面を省略しているが、
それが戯曲よろしくフェイドアウトのつもりでカットしたのか、
著者の女性らしさがそうさせたのか定かではないが、
そこに幾許かの物足りなさを感じたのも事実だし、逆にホッとしたのもまた事実だ。

そして、この小説には、いくつもの究極的な愛の形が交錯している。
女優になるべく自分の行動を正当化するなど傲慢の極みにある澄伽の強烈な自己愛、
澄伽の孤独を救おうと葛藤する兄のギリギリの献身愛、
宍道のために身を投げ打ち何も望まない待子の自虐的犠牲愛・・・。

そのなかでも、澄伽の存在に怯え時には殺されかけながらも近づくことを厭わなかった
清深の愛こそがもっとも歪で残酷で、そして肉親ならではのある種の”愛おしさ”に
満ち満ちていたことに、私は心底胸が震えた。

強烈なキャラクターによる疾風怒濤の展開に目まぐるしさを覚えつつ、
家族全員が澄伽の唯我独尊振りに振り回されながらも
それぞれが相互に影響を与え合う展開に心の片隅で共感を覚えたのは、
やはり「愛」という特別で複雑な感情ゆえなのだろうかなどと青臭いことを考えてみた。
どうやら私も腑抜けらしい。

小説がこんなに面白いのだから、本職の戯曲がつまらないわけないと思わせる、
三島由紀夫賞候補作として名を挙げた傑作にして必読の一冊。

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# by bookgipsy42 | 2008-12-22 00:46 | ☆☆☆☆

男たちの大リーグ (宝島社文庫)

デヴィッド ハルバースタム / 宝島社

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1949年のメジャーリーグのシーズンの激戦を、
当時の2大スーパースター、ジョー・ディマジオ(NYヤンキース)と
テッド・ウィリアムス(ボストン・レッドソックス)を軸に克明に描き出した作品。

昨年、自動車事故で急逝した、我が敬愛するピューリッツァー賞ジャーナリスト、
デイヴィッド・ハルバースタムのスポーツノンフィクションを読むのは、
『ジョーダン(原題:Playing for Keeps)』以来2冊目。

相変わらずの読み応えに圧倒されるとともに、
そこから窺える緻密な取材量に感嘆の念を禁じえない。
努めて冷静にロジカルな文章を紡ごうとしているものの、迸る情熱は行間から滲み出て、
それが旧き良き「フィールド・オブ・ドリームズ」の臨場感を眼前に再現させてくれるかのよう。

腰をどっしり据えて読み進めたい、フィールド・オブ・ドリームスの原風景を蘇らせてくれる一冊。

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# by bookgipsy42 | 2008-12-21 23:40 | ☆☆☆☆